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抄読会レポート

抄読論文

Vasopressors or Fluids in Early Septic Shock (N Engl J Med. 2026 Jun 11. doi: 10.1056/NEJMoa2516225. Epub ahead of print. )


担当

専攻医 小鹿 萌


論文概要

敗血症性ショックの初期蘇生では輸液療法が重要である一方、過剰輸液による肺水腫や組織浮腫などが問題となる。本研究は、初期輸液後もショックが持続する患者に対し、輸液を制限して早期に昇圧剤を開始するグループと、追加輸液を優先して必要に応じて昇圧剤を開始する戦略を比較した、3カ国51施設で実施された他施設非盲検ランダム化比較試験である。
対象は、感染症が疑われ、1000ml以上の輸液後も収縮期血圧90mmHg未満または平均血圧65mmHg未満でlactate 2mmol/Lを超える成人患者とした。963例がITT解析され、早期昇圧剤グループ481例、輸液グループ482例に割り付けられた。主要評価項目は90日までの生存かつ院外で過ごした日数とした。


主な結果

  • ランダム化前には両グループとも中央値1500ml(約18ml/kg)の輸液を受けていた。ランダム化後24時間の輸液量は、早期昇圧剤グループ1140ml、輸液グループ2248mlで早期昇圧剤グループでは約1.1L少なかった。また、昇圧剤開始までの時間は0.4時間対1.4時間であり、早期昇圧剤グループで約1時間早く開始された。
  • 主要評価項目である90日までの生存・院外日数は76日対76日であり、グループ間差は(95%CI -2.7~2.7,P=1.00)と有意差を認めなかった。90日死亡率、人工呼吸器使用、腎代替療法についても明らかな差を認めなかった。一方、肺水腫は早期昇圧剤グループ0.6%,輸液グループ5.0%と早期昇圧剤グループで少なかった。

Discussion
(筆者の考察)

著者らは、早期敗血症性ショックにおいて、輸液を制限し早期に昇圧剤を開始するグループは、追加輸液を優先する戦略と比較して90日までの生存・院外日数を改善しなかったと結論づけている。本研究では輸液量及び昇圧剤開始時期に明確なグループ差が得られたにも関わらず、主要な患者中心アウトカムには差を認めず、これは先行するCLOVERS trialなどとも整合する結果であるとしている。


後期研修医
コメント

本研究を通して、敗血症性ショックにおける初期輸液と昇圧剤開始のタイミングについて理解を深めることができた。特に重要と感じたのは本研究が輸液開始前の患者を対象としたものではなく、すでに中央値1.5Lの初期輸液を受けた後もショックが持続する患者を対象としている点である。
本研究では、輸液を制限して早期に昇圧剤を開始することで主要評価項目の改善は認められなかったが、追加輸液を優先するグループの優位性も示されなかった。この結果から、敗血症性ショックに対して一律に輸液を制限するのではなく、患者の状態に応じて輸液と昇圧剤を使い分けることが重要であると考えた。
救急診療では、低血圧に対して輸液を行う場面が多い。今回の抄読会で得た知識を元に、今後は30ml/kgという輸液量だけにとらわれず、末梢循環やlactateの推移・尿量・心エコー所見・肺うっ血の有無など総合的に評価し、追加輸液の必要性や昇圧剤開始のタイミングを判断できるように今後の敗血症性ショックの患者の初期診療や集中治療管理に活かしていきたい。


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