抄読会レポート
抄読論文
Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome, EOLIA trial (N Engl J Med 2018;378:1965-1975. DOI: 10.1056/NEJMoa1800385)
担当
専攻医 鈴木 瑠南
論文概要
Clinical Question:重症ARDSに対して早期にVV-ECMOを導入すると死亡率は改善するのか
研究デザイン:
国際共同(フランスを中心に16か国)
多施設共同(64施設)
Randomized Controlled Trial (RCT)
オープンラベル(非盲検)
Patient
年齢18~70歳
人工呼吸開始7日以内
肺保護換気を実施しても以下のいずれかを満たす:
PaO₂/FiO₂ <50 mmHgが3時間以上
PaO₂/FiO₂ <80 mmHgが6時間以上
pH <7.25かつPaCO₂>60 mmHgが6時間以上
Intervention
早期VV-ECMO導入
Comparison
まず最適な人工呼吸管理を行い、改善しない場合にはRescue ECMOを導入
Outcome
主要評価項目:60日死亡率
副次評価項目:治療失敗率、90日死亡率、人工呼吸器離脱日数、ICU在室期間、ECMO関連合併症
主な結果
- 最終的に249例がランダム化され、ECMO群が124例、対照群が125例になりました。この試験では対照群でも救命目的でECMOへのクロスオーバーが許可されており、対照群125例のうち35例が途中でRescue ECMO導入となりました。
- 主要評価項目である60日死亡率は、ECMO群35%、対照群46%でした。ECMO群で11%低い結果でしたが、統計学的有意差はありませんでした。副次評価項目である治療失敗率は35%対58%で、ECMO群が有意に低下しました。治療失敗とは、対照群ではECMOへのクロスオーバーまたは死亡と、ECMO群では死亡と定義されています。
- 対照群125例中35例(28%)がRescue ECMOへ移行しました。ランダム化からECMO導入までの中央値は4日(平均6.5日)でした。Rescue ECMO患者は、ランダム化時点から他の対照群患者より重症でした。また、Rescue ECMO導入時には循環不全を合併した患者もおり、7例ではVA-ECMOが導入されました。有害事象としては、ECMO群で出血や血小板減少は多かった一方、虚血性脳卒中は少ないという結果でした。
Discussion
(筆者の考察)
早期VV-ECMO導入は60日死亡率を有意には改善しませんでした。EOLIAでは、ECMO群の98%で実際にECMOが施行されました。対照群でも肺保護換気を徹底し、約90%で腹臥位療法、全例で筋弛緩薬が使用されるなど、現在の標準治療を十分に行ったうえで比較されています。
Limitationは4点あります。1つ目は、対照群の28%がRescue ECMOへクロスオーバーしたことです。Intention-to-treat解析では群間差が縮小しECMOの効果が過小評価された可能性があります。2つ目は、予定331例に対して249例で中間解析により早期終了したため、検出力が不足した可能性があります。3つ目は、ECMO経験豊富な専門施設のみで行われた試験であり、一般施設への外的妥当性は限定的です。4つ目は、オープンラベル試験であり、治療介入バイアスを完全には除外できません。
後期研修医
コメント
やはり注目すべき点は、対照群の28%がRescue ECMOへ移行したことです。これは通常治療では救命困難と判断された患者が約3割存在したことを意味します。倫理的理由からRescue ECMOを許可したことは妥当ですが、その結果ITT解析では群間差が縮小し、ECMOの効果が過小評価された可能性があります。
EOLIA trialは『ECMO vs 通常治療』を比較した試験ではなく、『早期ECMO戦略』と『必要時にRescue ECMOを許可する戦略』を比較した試験です。そのため、「主要評価項目に有意差がなかった」という結果だけでECMOの有効性を判断することはできません。現在のガイドラインではEOLIA単独ではなく、CESAR trialや、CESAR trialとEOLIA trialのIndividual Patient Data meta-analysisなどを含めたエビデンス全体を踏まえて、重症ARDSに対するVV-ECMOが推奨されています。ESICM 2023では、重症ARDSに対して強い推奨(Strong recommendation)となっています。ATSでは条件付き推奨(Conditional recommendation)ですが、どちらも重症ARDSではVV-ECMOを検討すべきという方向性は一致しています。ESICMのガイドラインでは、導入基準の指標としてEOLIA trialの導入基準が使用されています。
ECMO最大の目的はVILIを最小限に抑え、lung restにすることです。肺保護換気を維持するための治療として今後の診療でも早期から適応について評価する視点を持つようにしていきたいです。
関連キーワード
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#EOLIA trial
#肺保護換気
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