抄読会レポート
抄読論文
Effect of a Recombinant Human Soluble Thrombomodulin on Mortality in Patients With Sepsis-Associated Coagulopathy: The SCARLET Randomized Clinical Trial. (JAMA. 2019; 321:1993-2002. doi: 10.1001/jama.2019.5358.)
担当
専攻医 鈴木瑠南
論文概要
研究デザイン:
ランダム化比較試験(RCT)
国際共同試験(27ヶ月で実施)
他施設共同研究(159施設が参加)
第Ⅲ相試験
二重盲検
プラセボ対象試験
期間:2012年10月〜2018年3月
PICO:
Patient
1.18歳以上
2.感染巣が明らかでSIRS基準を満たす
3.抗菌薬投与が開始されている
4.敗血症関連凝固障害(sepsis-associated coagulopathy)を有する
5.循環不全 または 呼吸不全を合併
Intervention
遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリン (リコモジュリン) 0.06mg/kg/day を6日間静注
Comparison
placebo
Outcomes
主要評価項目:28日全死亡率
副次評価項目:90日全死亡率、入院期間、凝固マーカーの変化、凝固マーカー改善、臓器障害の改善、出血性有害事象
主な結果
- 28日全死亡率に有意差はなかった。
- 凝固マーカー改善に関しては有意差があった。
- Subgroup解析:投与時点でもINR >1.4を維持していた患者群では、リコモジュリン群で死亡率低下傾向がみられた。
Discussion
(筆者の考察)
試験途中にプロトコール改訂が行われ、対象患者基準確認から薬剤投与までの許容時間が15時間から40時間へ延長された。これは、15時間以内では患者登録が難しかったためで、この変更により、約20%の患者で投与時には INR ≤1.4 へと改善していた。投与時点でもINR >1.4を維持していた患者群では、リコモジュリン群で死亡率低下傾向がみられ、「凝固障害が持続している患者」で有効性が示唆された。
後期研修医
コメント
SCARLET試験では28日死亡率に有意差は認められませんでした。
一方で、SCARLET以降のメタアナリシスでは、全敗血症患者には効かないが、凝固障害が強く持続するhigh-risk患者では有効性がある可能性が示唆されています。事後解析においても、「凝固障害」と「高い重症度」を含む患者群での有効性が示唆されました。
こうしたエビデンスを総合的に考慮され、日本版敗血症診療ガイドライン2024においては、リコモジュリンの使用が弱く推奨されています。日本血栓止血学会のDIC診療ガイドラインではリコモジュリンの使用を強く推奨しています。
一方でグローバルスタディとしては、リコモジュリンはSCARLET試験において主要評価項目を満たせていないため、陰性試験と判断されており、アメリカではrTM投与を推奨するガイドラインはありません。
最近では、敗血症患者を凝固マーカー(FDP、D-dimer、血小板、PT-INRなど)を用いて4つのphenotypeに分類し、リコモジュリン(rhTM)の効果が患者群によって異なるかを検討する論文も発表されています。「高度凝固障害+高度臓器障害」を呈する phenotype(cluster dA)に分類される、高FDP、高D-dimer、血小板低下、重症臓器障害を有する患者群でのみ、リコモジュリン投与は28日死亡率・院内死亡率低下と関連していました。有効なサブグループ群を同定する必要性が注目されており、今後の高度凝固障害+臓器障害患者を早期から拾い上げるための患者群設定をした新たな研究が期待されます。
関連キーワード
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#トロンボモジュリンアルファ
#敗血症性DIC
#SCARLET trial
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