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抄読会レポート

抄読論文

Prevalence of Pulmonary Embolism in Patients With Syncope.(J Am Coll Cardiol. 2019;74:744-754. doi: 10.1016/j.jacc.2019.06.020.)


担当

専攻医 渡邉知佳


論文概要

救急外来を失神で受診した患者における肺塞栓症(PE)の有病率を検討した国際多施設前向きコホート研究(BASEL IX研究)。8か国13施設、1,397例を対象とし、Wells scoreおよび年齢調整D-dimerを用いてPEの事前確率を評価し、画像検査(CTPA、V/Q scan)は担当医の臨床判断で施行した。その後2年間追跡し、新規PE発症率や心血管死亡率を評価した。
主要評価項目:救急外来受診時のPE有病率、2年間の新規PE発症または心血管死亡率


主な結果

  • 救急外来受診時のPE有病率;
  • 失神患者全体:1.4%
  • 入院患者:2.3%
  • 初回失神入院患者:4.3%
  • → PESIT試験では初回失神入院患者の17.3%にPEを認めたが、本研究では大幅に低かった。
  • 2年間の新規PEまたは心血管死亡率:0.9%

Discussion
(筆者の考察)

本研究では、失神患者全体におけるPE有病率は1.4%と低く、PESIT試験との結果の乖離については、PESITで全例に画像検査が施行されたことによる過剰診断の可能性が考察されている。
また、PE検索は呼吸困難、DVT徴候、右脚ブロックなどPEを示唆する追加所見を有する患者に選択して行うべきとされ、失神患者全例に対する系統的PEスクリーニングは支持されなかった。
全例に画像検査を施行しなかったものの、2年間の追跡で新たに診断されたPEは少なく、臨床的に重要なPEの見逃しは少なかったと考察されている。一方、比較的全身状態の安定した患者のみを対象としていたことに加え、施設間で入院率に大きくばらつきがあり、選択バイアスを完全には排除できないため、結果をすべての失神患者へ単純に一般化できない点が限界として挙げられている。


後期研修医
コメント

今回、失神後の顔面外傷を主訴に救急外来を受診し、典型的なPE症状に乏しかったものの、D-dimerおよびトロポニン高値を契機に肺塞栓症と診断された症例を経験したことから、「失神患者ではどの程度PEを疑うべきか」「失神患者全例にPE検索を行うべきなのか」という疑問を持ち、本論文を選択した。
 PESIT試験以降、失神患者に対するPE検索が注目されたが、本研究では失神患者全例への一律のスクリーニングは支持されなかった。現在のガイドラインでもWells scoreなどで検査前確率を評価し、D-dimerやYEARS criteriaを組み合わせて画像検査の適応を判断する段階的アプローチが推奨されている。
 一方で、これらの診断アルゴリズムは「PEを疑った患者」を対象としており、まずPEを鑑別に挙げることが重要である。本症例のように典型的症状に乏しい患者も存在するため、失神患者全例を検索する必要はないが、原因不明失神ではPEも鑑別に残し、PEを示唆する所見を見逃さない姿勢が重要であると感じた。


関連キーワード

#失神
#肺塞栓症
#救急外来
#Wells score
#D-dimer 

公開日 : 2026-8-1

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